親が住まなくなった実家、相続したまま空き家になっている家。売却するかどうか迷う中で、「貸せば家賃収入になるのでは」と考える方は少なくありません。
実家を貸すことができれば、家を手放さずに収入を得られる可能性があります。一方で、賃貸活用には、修繕費、空室リスク、入居者対応、管理の手間などもあります。
「売るのはまだ早い」「思い出があるから残したい」「でも空き家のまま維持するのは不安」。そんなとき、賃貸活用は選択肢の一つになります。
この記事では、空き家になった実家を貸せるかどうかを考えるために、メリット・デメリット、確認すべきポイント、売却との比較を整理します。
空き家になった実家は貸せるのか
空き家になった実家は、条件が合えば賃貸に出せる可能性があります。
ただし、すべての実家がそのまま貸せるわけではありません。立地、建物の状態、設備、荷物の有無、家族の合意、管理体制などを確認する必要があります。
特に、長く人が住んでいなかった家は、見た目以上に設備が傷んでいることがあります。水道、電気、ガス、給湯器、雨漏り、床の傷み、シロアリなど、貸す前に確認すべき点は多くあります。
貸せる可能性がある実家の特徴
- 生活利便性が比較的高いエリアにある
- 駅、バス停、学校、スーパー、病院などが近い
- 建物の状態が大きく悪くない
- 水回りや設備を修繕すれば住める状態にできる
- 駐車場や庭など、地域の需要に合う特徴がある
- 管理会社に委託しやすいエリアにある
一方で、人口減少が進んでいる地域や、建物の老朽化が激しい場合は、賃貸よりも売却・解体・空き家管理を比較した方がよいこともあります。
実家を貸すメリット
まず、実家を貸すメリットを整理します。
1. 家を手放さずに済む
売却すると実家は手元から離れますが、賃貸であれば所有を続けながら活用できます。
親の思い出がある家をすぐに手放したくない場合や、将来的に家族が使う可能性を残したい場合には、賃貸活用が検討対象になります。
2. 家賃収入を得られる可能性がある
入居者が見つかれば、毎月家賃収入を得られます。
固定資産税や管理費、修繕費を家賃収入でまかなえる可能性もあります。ただし、家賃がそのまま手元に残るわけではないため、収支の確認は必要です。
3. 空き家の劣化を抑えやすい
人が住むことで、換気、通水、清掃などが自然に行われ、空き家のまま放置するより建物の劣化を抑えやすくなる場合があります。
ただし、入居者がいても修繕や設備故障は発生します。貸した後も管理が不要になるわけではありません。
4. 将来の選択肢を残せる
一定期間貸した後に、売却、建て替え、自分たちで使うなど、将来の選択肢を残せることがあります。
ただし、賃貸契約の内容によっては、すぐに明け渡してもらうことが難しい場合もあります。将来使う予定がある場合は、契約形態も含めて専門家に確認しましょう。
実家を貸すデメリット
一方で、実家を貸すことにはデメリットもあります。
1. 修繕費がかかる
人に貸すには、最低限安全に住める状態にする必要があります。
古い実家では、キッチン、浴室、トイレ、給湯器、床、壁、屋根、外壁などの修繕が必要になることがあります。
修繕費をかけても、その費用を家賃収入で回収できるかは別問題です。貸す前に、想定家賃と修繕費のバランスを確認しましょう。
2. 空室リスクがある
賃貸に出しても、すぐに入居者が見つかるとは限りません。
空室期間中も、固定資産税、保険料、管理費、修繕費などの負担は続きます。
特に、賃貸需要が弱い地域では、家賃を下げても入居者が見つかりにくい場合があります。
3. 入居者対応が必要になる
設備故障、雨漏り、近隣トラブル、退去時の原状回復など、入居者対応が発生します。
遠方に住んでいる場合、自分で対応するのは現実的に難しいことがあります。その場合は、管理会社に委託することを前提に考えた方がよいでしょう。
4. 売却したくなったときに制約が出ることがある
賃貸中の物件を売却することは可能な場合がありますが、自分で使いたい買主には売りにくくなることがあります。
また、賃貸契約の内容によっては、すぐに空室にして売ることが難しい場合もあります。
「将来売るかもしれない」と考えている場合は、貸し方や契約期間について事前に確認しておくことが大切です。
貸す前に確認したい7つのポイント
実家を貸すかどうか判断する前に、次の7つを確認しましょう。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 1. 立地 | 賃貸需要がある地域か。周辺に賃貸物件や入居ニーズがあるか |
| 2. 建物の状態 | 雨漏り、シロアリ、水回り、給湯器、床、外壁などに問題がないか |
| 3. 修繕費 | 貸せる状態にするために、どれくらい費用がかかるか |
| 4. 想定家賃 | 周辺相場から見て、どれくらいの家賃が見込めるか |
| 5. 管理体制 | 自主管理できるか、管理会社に委託するか |
| 6. 家族の合意 | 兄弟・親族が賃貸活用に納得しているか |
| 7. 将来の出口 | 何年貸すのか、将来売るのか、家族が使う可能性があるか |
この7つを整理せずに「貸せば収入になる」と考えると、あとから負担が大きくなることがあります。
賃貸に出す前にかかる費用
実家を貸す場合、貸し出し前に一定の費用がかかることがあります。
主な費用の例
- ハウスクリーニング費用
- 水回りの修繕費
- 給湯器やエアコンの交換費用
- 壁紙や床の補修費用
- 雨漏り・屋根・外壁の修繕費用
- 残置物の撤去費用
- 火災保険・賃貸向け保険の見直し
- 管理会社への委託費用
費用をかければ必ず貸しやすくなるとは限りません。大切なのは、修繕費を家賃収入で回収できる見込みがあるかどうかです。
簡単な収支イメージ
賃貸活用を考えるときは、家賃収入だけでなく、出ていくお金も合わせて見ます。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 年間家賃収入 | 月8万円 × 12か月 = 96万円 |
| 管理委託料 | 家賃の数%程度がかかる場合があります |
| 固定資産税等 | 毎年発生します |
| 修繕費 | 設備故障や退去時に発生することがあります |
| 空室リスク | 入居者がいない期間は家賃収入がありません |
表面上の家賃だけで判断せず、「実際に手元に残る金額」を見ることが大切です。
自主管理と管理会社委託の違い
実家を貸す場合、自分で管理する方法と、管理会社に任せる方法があります。
| 項目 | 自主管理 | 管理会社に委託 |
|---|---|---|
| 費用 | 管理費を抑えやすい | 管理委託料がかかる |
| 手間 | 入居者対応を自分で行う | 対応を任せやすい |
| 遠方対応 | 難しい場合が多い | 遠方でも管理しやすい |
| トラブル対応 | 自分で判断・手配が必要 | 管理会社を通じて対応しやすい |
実家が遠方にある場合や、本業が忙しい場合は、管理会社への委託を前提に収支を考えた方が現実的です。
貸すより売った方がよい場合
次のような場合は、賃貸より売却を中心に考えた方がよいこともあります。
- 実家が遠方で、管理に通うのが難しい
- 建物がかなり古く、修繕費が大きい
- 周辺に賃貸需要が少ない
- 家族が将来使う予定がない
- 固定資産税や維持費の負担を終わらせたい
- 兄弟間で早く整理したい意向が強い
賃貸は、家を残せる一方で、所有者としての責任も続きます。負担を減らしたい場合は、売却との比較が必要です。
売らずに一旦保留した方がよい場合
一方で、すぐに貸す・売るを決めず、一旦保留した方がよい場合もあります。
- 相続手続きが終わっていない
- 兄弟・親族の意向が整理できていない
- 重要書類や貴重品の確認がまだ終わっていない
- 片付けが進んでおらず、状態を把握できていない
- 将来家族が住む可能性がある
この場合は、まず相続・片付け・家族相談を優先し、貸すか売るかはその後に考える方が進めやすいことがあります。
実家を貸すときの進め方
実家を貸す方向で検討する場合は、次の順番で進めると整理しやすくなります。
- 家族・兄弟の意向を確認する
- 名義や相続登記の状況を確認する
- 建物の状態を確認する
- 片付け・残置物の量を確認する
- 周辺の家賃相場を調べる
- 必要な修繕費の目安を確認する
- 自主管理か管理会社委託かを決める
- 売却した場合との比較も行う
いきなりリフォームを始めるのではなく、まずは需要、修繕費、管理体制、家族の意向を確認しましょう。
まとめ:実家を貸すなら「家賃収入」だけで判断しない
空き家になった実家は、条件が合えば賃貸活用できる可能性があります。
ただし、実家を貸すことは、単に家賃収入を得ることではありません。修繕費、空室リスク、入居者対応、管理体制、将来の売却可能性まで含めて考える必要があります。
まずは、次の順番で整理しましょう。
- 賃貸需要があるエリアか確認する
- 建物の状態と修繕費を確認する
- 想定家賃と維持費を比較する
- 管理会社に任せるか、自分で管理するか考える
- 家族の意向を確認する
- 将来売却する可能性も含めて出口を考える
「貸す」「売る」「残す」のどれが正解かは、実家の状態やご家族の事情によって変わります。家賃収入だけでなく、負担と出口まで含めて考えることが大切です。
なお、本記事は専門家にご相談いただく前の「考えの整理」を目的としたものであり、個別の不動産取引、税務、法務上の判断を行うものではありません。最終的な判断は、宅地建物取引士、税理士、司法書士などの有資格者や専門家にご相談ください。
