親の家が空き家になったとき、多くの方が気になるのが固定資産税です。
「誰も住んでいないのに税金はかかるのか」「古い家を壊したら税金が上がると聞いた」「空き家のまま放置するとどうなるのか」。実家を相続したり、親が施設に入ったりしたタイミングで、こうした疑問を持つ方は少なくありません。
空き家は、使っていなくても所有している限り、原則として固定資産税などの負担が続きます。さらに、管理状態が悪くなると、自治体からの指導・勧告の対象となり、住宅用地特例の扱いが変わる場合もあります。
この記事では、空き家になった実家の固定資産税について、放置する前に確認しておきたいポイントを整理します。
空き家でも固定資産税はかかる
まず押さえておきたいのは、空き家であっても、所有している限り固定資産税はかかるという点です。
固定資産税は、土地や建物などの固定資産を所有している人に課される税金です。誰かが住んでいるかどうか、実際に使っているかどうかにかかわらず、原則として所有者に納税義務があります。
実家が空き家になっていても、固定資産税の納税通知書は毎年届きます。都市計画区域内にある不動産では、固定資産税に加えて都市計画税がかかる場合もあります。
まず確認したいもの
- 固定資産税の納税通知書
- 土地と建物の課税明細
- 所有者名義
- 納税している人
- 年間の税額
- 空き家になった時期
最初にやるべきことは、税額を正確に把握することです。納税通知書を見れば、土地と建物それぞれの評価額や税額を確認できます。
住宅が建っている土地には特例がある
住宅が建っている土地には、一定の条件のもとで固定資産税等が軽減される「住宅用地特例」が適用される場合があります。
簡単にいうと、住宅が建っている土地は、何も建っていない土地よりも税負担が軽くなることがあります。
| 区分 | 固定資産税の課税標準の扱い |
|---|---|
| 小規模住宅用地 | 住宅1戸あたり200㎡以下の部分について、課税標準が軽減される場合があります |
| 一般住宅用地 | 200㎡を超える部分についても、一定の軽減が適用される場合があります |
この特例があるため、「古い家を壊して更地にすると固定資産税が上がることがある」と言われます。
ただし、具体的な税額は土地の評価額、面積、自治体、都市計画税の有無などによって変わります。実際にどの程度変わるかは、自治体の固定資産税担当窓口などで確認する必要があります。
家を解体すると固定資産税が変わることがある
空き家を解体して更地にすると、住宅用地特例の扱いが変わる可能性があります。
建物がなくなることで、土地が住宅用地ではなくなり、固定資産税等の負担が増える場合があります。そのため、古い実家を解体するかどうかは、解体費用だけでなく、解体後の税負担も含めて考える必要があります。
解体前に確認したいこと
- 現在の固定資産税額
- 解体後の固定資産税額の見込み
- 建物の老朽化の程度
- 古家付きで売れる可能性
- 更地にした方が売りやすい地域か
- 自治体の解体補助金の有無
- 解体後、売却までどのくらいかかりそうか
解体した方が安全面ではよい場合もあります。一方で、更地にしてから売却まで時間がかかると、その間の税負担が重く感じられることもあります。
解体前には、不動産会社、解体業者、自治体、税理士などに確認し、費用と税負担の両方を見て判断しましょう。
放置空き家は住宅用地特例の対象外になる場合がある
注意したいのは、建物が残っていても、管理状態が悪い空き家は住宅用地特例の対象外になる場合があることです。
空き家を適切に管理せず、周辺に悪影響を及ぼすおそれがある状態になると、自治体から指導や勧告を受ける可能性があります。
管理不全空家等や特定空家等として市区町村長から勧告を受けた場合、その敷地は固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外される場合があります。
注意されやすい状態
- 建物が倒壊しそう
- 屋根や外壁が落下するおそれがある
- 庭木や雑草が伸び、隣地や道路に影響している
- ごみや害虫の発生で衛生上の問題がある
- 不審者の侵入など防犯上の不安がある
- 景観を著しく損なっている
- 近隣から苦情が出ている
つまり、「壊すと税金が上がるから、古い家をそのまま残しておけばよい」とは限りません。管理状態が悪いまま放置すると、結果的に税負担や行政対応のリスクが高まる場合があります。
空き家を放置すると税金以外の負担も増える
空き家を放置した場合の負担は、固定資産税だけではありません。
誰も住んでいない家でも、所有している限り、さまざまな維持費や管理負担が発生します。
| 負担 | 内容 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 毎年発生する税負担 |
| 火災保険・地震保険 | 契約状況によって継続負担が発生 |
| 草刈り・庭木管理 | 近隣トラブル防止のため必要になることがあります |
| 修繕費 | 雨漏り、外壁、屋根、設備不具合などへの対応 |
| 片付け費用 | 売却・賃貸・解体前に家財整理が必要になることがあります |
| 交通費・時間 | 遠方の場合、管理のための移動負担も発生します |
「使っていない家だからお金はかからない」と思っていても、実際には少しずつ負担が積み上がっていきます。
相続した空き家を売る場合の特例
相続した実家を売却する場合、一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例が使える場合があります。
これは「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」と呼ばれる制度です。
ただし、適用には複数の要件があります。たとえば、対象となる家屋、譲渡時期、売却価額、相続人の数、耐震基準や取壊しの状況などが関係します。
また、令和6年1月1日以後の譲渡で、被相続人居住用家屋および敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上の場合は、控除額の上限が2,000万円となります。
確認したいこと
- 親が住んでいた家かどうか
- 相続した時期
- 売却予定時期
- 建物の築年数や耐震基準
- 売却価額
- 相続人の人数
- 解体してから売るか、建物付きで売るか
この特例は、要件が細かいため、自己判断で進めるのはおすすめしません。売却前に税理士や自治体の窓口などへ確認しましょう。
固定資産税の負担を整理するためにやること
空き家の固定資産税が気になる場合は、まず次の順番で整理しましょう。
- 固定資産税の納税通知書を確認する
- 土地と建物の課税明細を確認する
- 現在の名義を確認する
- 誰が納税しているか確認する
- 空き家の管理状態を確認する
- 解体した場合の税額見込みを自治体に確認する
- 売却・賃貸・解体・保有の選択肢を比較する
固定資産税だけを見て判断すると、解体費用や売却可能性、家族の意向、空き家管理の負担を見落とすことがあります。
税金は重要な判断材料ですが、実家の出口を考えるときは、費用・安全性・家族関係・将来の使い道も合わせて考えましょう。
ケース別:考え方の目安
状況によって、考えるべき選択肢は変わります。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 建物の状態が比較的良い | 賃貸・売却・保有を比較し、活用可能性を確認する |
| 建物が古く傷みが大きい | 古家付き売却、解体後売却、解体費用を比較する |
| 遠方で管理できない | 売却、空き家管理サービス、地元業者への委託を検討する |
| 兄弟間で意見が分かれている | 費用負担と管理者を明確にし、必要に応じて専門家へ相談する |
| 税負担が重い | 売却、賃貸、解体、保有の費用比較を行う |
大切なのは、「税金が上がるから解体しない」「税金がかかるからすぐ売る」と一つの要素だけで決めないことです。
空き家の固定資産税でよくある誤解
誤解1:空き家なら税金は安くなる
空き家だからといって、固定資産税が自動的に安くなるわけではありません。むしろ、管理状態によっては住宅用地特例の対象外となる場合があります。
誤解2:古い家は残しておけば必ず税金が安い
住宅が建っていることで特例が適用される場合はありますが、管理不全の状態で放置すれば、勧告の対象となる可能性があります。
誤解3:解体すると必ず損をする
解体により税負担が変わることはありますが、建物の安全性や売却可能性、解体補助金、買主のニーズによっては、解体が合理的な場合もあります。
誤解4:税金だけ見れば判断できる
空き家の判断には、税金だけでなく、売却価格、修繕費、解体費、管理負担、家族の意向、相続手続きも関係します。
参考情報
- 国土交通省:空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報
- 国土交通省:固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置
- 国税庁:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 自治体:固定資産税、空き家相談、解体補助金に関する窓口
まとめ:空き家の固定資産税は、放置前に必ず確認する
空き家になった実家でも、所有している限り固定資産税などの負担は続きます。
住宅が建っている土地には住宅用地特例が適用される場合がありますが、解体や管理不全の状態によって、扱いが変わることがあります。
また、相続した空き家を売却する場合には、一定要件のもとで譲渡所得の特別控除が使える場合もありますが、要件は細かく、自己判断は避けた方が安全です。
まずは、固定資産税の納税通知書を確認し、名義、税額、建物の状態、管理状況、売却・賃貸・解体の選択肢を整理しましょう。
なお、本記事は専門家にご相談いただく前の「考えの整理」を目的としたものであり、個別の税務、法務、不動産取引上の判断を行うものではありません。最終的な判断は、税理士、司法書士、宅地建物取引士、自治体窓口などにご相談ください。
